液体凍結機「凍眠」とは?
液体凍結とは、パックした食品を-30℃の液体(アルコール)で冷凍する手法で、弊社代表の山田が開発した冷凍システムです。通常の冷凍庫は「冷たい空気」で冷凍しますが、凍眠は「冷たい液体」を使って冷凍します。冷凍において重要なポイントは「熱を奪うチカラ」。冷気に比べ、液体は熱伝導率が非常に高いといった特徴があります。このページでは、液体凍結の簡単なメカニズムからメリットなどをご案内します。
1. 凍眠の凍結スピード
すでに冷凍スピードのポイントは熱伝導であることはお伝えしました。それでは、熱伝導について少し深堀りしていきましょう。90℃のサウナには気持ちよく入れますが、電気ポットから出る90℃の熱湯に触るとやけどを負ってしまいます。当たり前の事ではあるのですが、よく考えてみると、サウナも電気ポットも同じ温度ですね。違いは、気体か液体か。同じ温度でも液体は気体よりも熱を伝えるチカラが強いという事がお分かりになると思います。凍眠は、液体の熱伝導のチカラを利用して食品を冷凍します。ですから、-30℃の液体であっても、-100℃の窒素ガス凍結の約8倍の冷凍スピードで急速冷凍することが出来るのです。
グラフ凍結時間比較

上記は、200gの中華丼の具を凍結試験したときのデータです。一般的な急速凍結機と比べ、液体急速凍結機は大幅に凍結時間を短縮できることが見て取れます。アツアツの状態からでも、クックチルのみならず、クックフリーズまで素早く処理できます。解凍時の再現性もさることながら、60℃~10℃の菌が繁殖しやすい温度帯を素早く通過するので、より衛生的に食品を冷凍することができます。
2. 凍眠の凍結品質
急速凍結というのは、その名のとおり品物を素早く、短時間で凍結させることをいいますが、なぜ、短時間で凍らせると品質がよくなるのでしょうか?
例えば、肉・魚・野菜などの中には水分がありますね。冷凍をすると、その水分は氷の結晶となります。冷凍する際に結晶が膨張する温度帯(最大氷結晶生成帯:0℃~-5℃)を通過するスピードが遅いと、氷結晶はみるみる膨張します。食材の細胞が20ミクロン程度であるのに対し、氷結晶のサイズが細胞よりも大きくなってしまいます。そうなると、細胞膜や細胞壁などを傷つけ、解凍時にそこからドリップが流れ出てしまうのです。うまみ・栄養素を含むドリップが流出することで、いつしか冷凍は美味しくないといったレッテルを貼られてしまいました。
一方、凍眠で冷凍すると、最大氷結晶生成帯を素早く通過するため、氷結晶は5ミクロン程に抑えられます。氷結晶が非常に微細なので、細胞破壊を防ぎ、解凍後も高い再現性を維持することが出来るのです。
氷結晶の膨張イメージ
凍結比較
従来のエアブラスト凍結解凍後に素材からドリップ(旨味成分)が滲み出てしまっています。
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凍眠のリキッド凍結解凍後も細胞が破壊されない為、ドリップが滲み出ることはありません。
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エアブラスト:牛肉 |
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リキッド:牛肉 |
エアブラスト:あじ |
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リキッド:あじ |
エアブラスト:かに |
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リキッド:かに |
その差はドリップ量のデータにも顕著に現れます
3. 凍眠のメリット
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20倍凍結速度
熱伝達の早い液媒介なので、凍結速度は通常冷凍の約20倍の圧倒的な時間節約を実現します。
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まるで落ちない驚異の鮮度(ドリップレス)
魚や肉の細胞内水分をほぼ原形のまま凍結!細胞が壊されない為、解凍時にドリップがほとんど発生しません。だから、鮮度、味、見栄え、歩留まり全てにおいて驚きの鮮度を実現!
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一般冷凍庫で長期保存
劣化の無い凍眠凍結品は、長期保存が可能に。生食用食材でも年間を通した出荷計画を実現します。一般冷凍庫で保存できるのでコストにも優しい。
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ランニングコスト
商品1㎏に対してかかるランニングコストはわずか数円。高額なコストがかかる窒素ガスや、超低温凍結庫以上の品質を低コストで実現。
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スペースメリット
最小限のスペースで、最大限の凍結能力。
必要面積は、同能力のトンネルフリーザーに比べ約1/6以下。工場内スペースを有効に使えます。 -
解凍方法を選ばない
常温・低温・加熱・流水など、解凍方法はなんでもOK!特別な解凍庫は必要ありません。
凍眠の使用用途はお客様によって様々ですが、使い方でポイントになるのは
- 鮮度、品質が高いまま長期保存が出来る(生食ものも冷凍保存可能)
- その時期しかとれない品を、時間をずらし価値が高まる時期に高鮮度で出荷ができる。
- 高品質の冷凍作り置きができるので、忙しい時期の作業を前倒しで分散してスケジュールできる。
- いままで、品質面で冷凍することができない、と思っていた商品も冷凍可能。
つまり、品質面をフレッシュに近づけたまま冷凍することのメリットだけを受け取ることができます。
もちろん、生野菜等の冷凍に向かい商品もありますが、多くの品物で、液体急速凍結機は力を発揮します。
4.凍眠の導入業種とその使い方
畜産業
食肉卸・加工
食肉業界は、季節により、売れていく部位が偏ってしまいます。あまった部位を高品質で冷凍しておけば、時期をずらして値段の高い時期に市場へ投入していけます。また、冷凍は、ドリップが出るものという概念が、液体急速凍結機には当てはまりません。凍眠なら、鶏肉などのドリップのでやすい商品も鮮度はフレッシュです。
ハム・ソーセージ
多くはスライス前のテンパリング作業で導入いただいています。緩慢冷凍のテンパリングよりも、歩留まりが改善し、凍結時間の作業効率が良くなります。
水産業
水産卸
鮮魚をそのままパックして液体急速凍結をかけ、冷凍物流する動きが多くなっています。特に、漁期の限られている商品、海外向けの商材など。時期をずらして、距離を飛ばして付加価値を創り出します。
水産仲買
水産物は、物量の多い旬の時期が、安くおいしいものが多いです。市場内や仲買さんでは、その良い時期の品物をフィレなどの形で、液体急速凍結保存することで、エンドユーザーのお客様への売価を安定させて、その他会社よりも、有利に商談をすすめる事ができます。
水産加工
特に刺身の商材でご使用いただく場合が多くなりました、寄生虫の問題の多くが冷凍することでクリアすることが可能ですが、品質的に通常の冷凍で刺身の商材は厳しいものです。しかし、液体急速凍結機凍眠ですと、アジやサンマなどの青魚もフレッシュに近い状態で食することができます。その他、原料や練り製品の凍結でも活躍しています。
農産業
冷凍フルーツ
農作物は、収穫が少なければ商売になりませんし、多過ぎれば価格が下がり、場合によっては捨てるような価格で取引しなければいけません。近年は、冷凍のフルーツも需要が高まっており、そのまま食べたり加工用の材料にしたりと液体急速凍結であれば、様々な用途に対応できます。
飲食チェーン
焼肉店
セントラルキッチンで原料の凍結や、ポーション分けしたカット肉を液体急速凍結しておけば、店舗で人件費を削減できますし、通常冷凍に納得のできないこだわりの肉も品質を落とすことなく解凍後の提供が可能です。
居酒屋等
セントラルキッチンで作った調理品を、液体急速凍結で保存し配送することで、お店での作業を簡略化、チルド配送で日配する必要もないので、配送費も抑えられます。もちろん、店舗で冷凍保存できるので食品のロスもなくなります。
その他
小売業
食品ロスと人件費で、バックヤードは常に悩みを抱えていますが、原料系商品も調理済みデリカ商品も、液体急速凍結品を中心に商品をコントロールすることで、食材のロスをなくしバックヤードの手間も減らします。
中食・病院食・介護食
クックチルからクックフリーズに移行することで、日配する必要なく作り溜めできるので、配送費の削減と、CKは毎日多品種を調理せずに、運営がスムーズに行えます。食事提供施設側も作り置きを解凍すればよいので急な依頼に振り回されませんし、冷凍惣菜で問題だった野菜類も食感を残し、おいしく提供することができます。
5. 動画で解説
上記のチャプター1~2をイラスト付きで解説しています。